ヨーロッパ州の定義と範囲|大陸ヨーロッパとの違いとは

 

「ヨーロッパ」とは、「ユーラシア大陸北西の半島部にあたる、西を大西洋、南を地中海、北を北極海、東をウラル山脈に囲まれた地域」です。

 

「ヨーロッパ大陸」とも呼びますが、あくまで「ユーラシア大陸の一部」に過ぎません。アフリカ大陸、アメリカ大陸のように孤立した大陸ではなく、歴史・文化・伝統などを基準に、ある程度の同一性をもとに分類されている地域です。

 

そして政治的立場によって、「ヨーロッパ」が示す範囲に若干の違いはあるものの、国際連合は、西を北大西洋に、東をウラル川/ウラル山脈/カスピ海に、南を地中海/黒海/ボスポラス海峡/コーカサス山脈に、北をバレンツ海/ノルウェー海に、に囲まれた44か国をヨーロッパ州の国々と定義しています。

 

 

大陸ヨーロッパとヨーロッパの違い

ヨーロッパ州とは別に、「大陸ヨーロッパ(欧州本土/本土欧州とも)」という概念があります。これはヨーロッパのうちアイスランドアイルランドイギリスなどの島国を除く諸国のことを指す概念です。イギリスは、政治/経済/社会あらゆる面で本土の国々と性質的に差が大きいので、あえて本土と切断する概念が生まれました。

 

これは、地理的な位置だけでなく、歴史的、文化的、政治的な独自性にも基づいています。イギリスは長い間、海を隔てた「島国」として独自の道を歩んできました。これは、例えば、ヨーロッパ大陸の国々が経験した多数の地域紛争や政治的統合の動きから距離を置いてきたことにも現れています。

 

EUと大陸ヨーロッパ

また、「大陸ヨーロッパ」という概念は、特にEU(欧州連合)の文脈で顕著になります。EU加盟国の中にはアイスランドノルウェーなど非加盟の島国があり、イギリスはブレグジットを通じてEUから離脱しました。これにより、EUの政策や経済統合のプロセスは、主に本土ヨーロッパの国々に影響を及ぼすことが多くなりました。

 

さらに、文化的、社会的な側面でも、本土ヨーロッパの国々は、伝統的に密接な交流と共通の歴史を共有しています。これに対し、島国はしばしば独自の文化的アイデンティティを保持してきました。

 

したがって、「大陸ヨーロッパ」という概念は、地理的な位置だけでなく、政治的、文化的な独自性に基づく区分けであり、ヨーロッパの多様性と複雑さを反映しています。この概念は、ヨーロッパ諸国間の相互関係や国際政治におけるその役割を理解する上で、かなり重要です。

 

国連基準のヨーロッパ諸国一覧

橙色地域:東欧 水色地域:西欧 緑色地域:南欧 青色地域:北欧

 

東ヨーロッパ諸国

国数:10か国

 

 

国連基準の東ヨーロッパ諸国の共通点は、主に以下の要素によって定義されます。

 

  • 地理的位置:これらの国々はヨーロッパ大陸の東部に位置しており、その地理的位置が共通の特徴です。
  • 「歴史的経緯:」多くの東ヨーロッパ諸国は、冷戦時代にソビエト連邦の影響下にあるか、実際にその一部でした。この共通の歴史は、政治体制、経済、文化において類似点を生み出しています。
  • 政治的・経済的過程:これらの国々は共産主義からの転換を経験し、1990年代初頭に市場経済への移行と政治的変革を実施しました。
  • 社会的・文化的特徴:東ヨーロッパ諸国は類似の文化的、社会的特徴を共有している場合が多く、スラブ文化の影響を受けている国々が多いです。
  • 国際関係:これらの国々は、EUやNATOへの加盟を目指している国々もあり、西ヨーロッパ諸国との関係強化を図っていますが、ロシアとの歴史的および地政学的関連性も強いです。

 

これらの共通点は、東ヨーロッパ諸国が直面する課題や国際関係における彼らの役割に影響を及ぼしています。

 

西ヨーロッパ諸国

国数:9か国

 

 

西ヨーロッパ諸国の共通点は、以下のような特徴によって定義されます:

 

  • 経済的発展: 西ヨーロッパ諸国は一般に高い経済的発展を達成しており、世界の中でも特に豊かな国々の一部を形成しています。これには先進的な産業、高い生活水準、発達した社会福祉制度が含まれます。
  • 民主的政治体制: これらの国々は、安定した民主的政治体制を有しており、政治の透明性、法の支配、市民の自由と権利の保護が強調されています。
  • 歴史的背景と文化的多様性: 西ヨーロッパ諸国は、ローマ帝国、キリスト教、ルネサンス、啓蒙時代など、共通の歴史的経緯を持ち、多様な文化的遺産を共有しています。
  • EUとの関係: 多くの西ヨーロッパ諸国は欧州連合(EU)のメンバーであり、経済的統合、政治的協力、国境を越えた自由な移動などが特徴です。国際的な影響力: これらの国々は国際的な政治、経済、文化の分野で大きな影響力を持っています。国際機関や多国間の政治的な議論において重要な役割を果たしています。
  • 社会保障制度: 西ヨーロッパ諸国は充実した社会保障制度を有しており、教育、医療、高齢者ケア、失業対策などの分野で高いレベルの公共サービスを提供しています。

 

これらの共通点は、西ヨーロッパ諸国が共有するアイデンティティと、世界的な文脈での彼らの位置づけを反映しています。

 

南ヨーロッパ諸国

国数:15か国

 

 

国連基準の南ヨーロッパ諸国には、主に地中海に面した国々が含まれます。これらの国々の共通点は以下のようにまとめられます:

 

  • 地中海性気候:南ヨーロッパ諸国は温暖な地中海性気候を共有しており、これが農業、観光、生活様式に大きな影響を与えています。
  • 歴史的・文化的背景:この地域は古代ギリシャ、ローマ帝国、そして後のビザンチン帝国の影響を受けた豊かな歴史と文化遺産を持っています。これは建築、芸術、文学、哲学において顕著です。
  • 観光業の発展:地中海沿岸の美しい景色、温暖な気候、歴史的遺産は、この地域を世界的な観光地にしています。
  • 農業の特徴:オリーブ油、ワイン、柑橘類などの地中海型農業が盛んで、これらは地域経済に重要な役割を果たしています。
  • EUとの関係:多くの南ヨーロッパ諸国はEUのメンバー国であり、EU政策による経済的、政治的影響を受けています。
  • 経済構造:観光、農業、漁業が経済の重要な柱であり、一部の国々では工業やサービス業も重要な役割を担っています。
  • 社会的な特徴:家族を中心とした社会構造、地域コミュニティの強さ、そして一般的にリラックスした生活様式が特徴です。

 

これらの共通点は、南ヨーロッパ諸国が共有する地理的、文化的アイデンティティを形成しており、地域の政治的および経済的な発展に影響を与えています。

 

北ヨーロッパ諸国

国数:10か国

 

 

国連基準の北ヨーロッパ諸国は以下のような特徴を共有しています。

 

  • 気候と地理:これらの国々は比較的涼しい気候を共有し、多くは森林、湖、および海岸線に恵まれた地形を持っています。
  • 高い生活水準と社会福祉制度:北ヨーロッパは、高い生活水準、充実した社会福祉制度、教育、医療サービスが特徴です。
  • 政治的安定性と透明性:これらの国々は民主的で透明性が高く、政治的安定性が高いと評価されています。
  • 環境意識の高さ:北ヨーロッパ諸国は環境保護に対する意識が高く、持続可能な発展を推進しています。
  • 経済発展:これらの国々は、比較的高い経済の発展を達成しており、特に教育、技術、研究開発が強調されています。

 

なおあまり「北欧」イメージがないイギリスが北ヨーロッパに分類される主な理由は、地理的な位置にあります。イギリスは、その北部が北ヨーロッパの一部とみなされるため、この地域グループに含まれているのですね。

 

また、イギリスは歴史的、文化的にもスカンディナビア諸国やバルト諸国といくつかの共通点を持っており、これも地域分類に影響している可能性があります。ただし、国連の地域分類は一部の歴史的および政治的な要素を反映しており、必ずしも厳密な地理的基準に基づいているわけではないことには留意です。

 

日本外務省基準のヨーロッパ諸国

日本は国連がアジアに分類している

 

アゼルバイシャン/アルメニア/ウズベキスタン/カザフスタン/キルギス/キプロス/コソボ/ジョージア/タジキスタン/トルクメニスタン

 

を東欧に分類しているため、ヨーロッパの国数は少し増えて54か国になります。

 

このように、国によって、ヨーロッパの指し示す範囲が違うのは、先でも触れた通り、地理的、文化的、歴史的な要因によるものです。

 

地理的には、ユーラシア大陸の国々がどのようにヨーロッパとアジアに分割されるかに関しては、国によって異なる見解があります。例えば、ウラル山脈が伝統的にヨーロッパとアジアの境界とされてきましたが、この基準は常に一貫しているわけではないのです。

 

文化的、歴史的な側面では、多くの国々がヨーロッパとアジアの双方にまたがる文化的、歴史的な背景を持っています。たとえば、アゼルバイジャンやアルメニアは、歴史的に東西両方の文化的影響を受けており、これが地政学的な分類に影響を与えています。

 

また、国際政治の文脈では、特定の地域をヨーロッパに含めるかどうかは、その国との外交関係や地域的な安全保障の観点からも重要な意味を持つことがあります。したがって、国や国際機関によってヨーロッパの範囲に対する解釈が異なるのは、これら複数の要因が組み合わさっている為なんですね。