正教会から紐解く東欧史

正教会とは、神秘と典礼のうちに生きる信仰であり、
時間ではなく永遠を映す鏡である。

─ 神学者・ウラジーミル・ロスキー（1877 - 1954）

正教会は、ヨーロッパ史において特に東ヨーロッパとバルカン地域の宗教的および文化的アイデンティティに深く影響を与えてきました。正教会の起源は、初期キリスト教に遡り、特に東ローマ（ビザンツ）帝国で発展しました。1054年の東西教会の大分裂は、ローマのカトリック教会とコンスタンティノープルの正教会の間の宗教的、文化的、政治的な分離を決定的なものとしました。

この分裂後、正教会はビザンツ帝国の影響下で発展し、スラブ諸国やロシアに広まりました。特に、988年のキエフ大公ウラジーミルのキリスト教化は、ロシアとウクライナの正教会の歴史における重要な出来事とされています。正教会は、ロシア帝国の成立と拡大とともに、国家の正式な宗教として機能しました。

正教会の神学、礼拝形式、美術、建築は独自の発展を遂げ、東ヨーロッパとバルカンの文化と伝統に大きな影響を与えました。ソビエト連邦の時代を通じて抑圧された後、正教会は東ヨーロッパ諸国において宗教的および国家的アイデンティティの復興に大きく貢献しています。正教会は、ヨーロッパの宗教的および文化的風景において重要な位置を占めています。