ハンガリーの名物料理グヤーシュ
中央ヨーロッパに位置する日本の1/4程度の小さな国、ハンガリー。ハンガリー料理店は日本には10軒もないほど、私たちにとっては馴染みのない食文化ですが、今回はそんなハンガリー料理の特徴についてご紹介したいと思います。
ハンガリーにはカフェ文化が根強くあり、街を歩くと非常に多くのカフェを目にしますが、これは19世紀ごろに市民が交流したり、知識人たちが議論や本の執筆をしたりするための場として多くのカフェが建てられたことの名残です。
カフェ文化の定着とともに、ドボシュ・トルタ(チョコレートクリームのケーキ)、エステルハーズィ・トルタ(アーモンド粉のケーキ)、ショムローイ・ガルシュカ(球形のスポンジケーキ)など、新しいお菓子も次々と考案されるようになりました。
ハンガリー料理に利用されるパプリカ
日本ではまだあまり馴染みがありませんが、グヤーシュ・レヴェシュ(牛肉、ニンジン、玉ねぎなどを煮込んだスープ)、ハラースレー(魚のスープ)、テルテット・カーポスタ(ロールキャベツ)、パプリカーシュ・チルケ(チキンのパプリカ煮込み)などがハンガリーの代表的な料理です。これらの料理はすべてパプリカ粉で味付けされるため、赤い色をしているのが特徴です。
パプリカ利用の歴史
そのようにハンガリー料理には欠かせないパプリカですが、中南米が原産地で、ハンガリーには18世紀頃に入ってきました。当時のパプリカは唐辛子のように辛く、食べると体が熱くなったため、当時は大変高価だった胡椒の代替品として用いられたり、薬として服用されたりしていました。そして主に使用していたのは胡椒を買うお金が無い農民たちでした。
辛さ故に最初は少量ずつ使われていたパプリカですが、栄養価が高いことが分かると、辛みの元である種と筋を取り除いて、大量に料理に入れられるようになりました。こうしてできたのが現在のハンガリー料理なのです。
パプリカなしでは語れないほど、ハンガリー料理にとってパプリカは必要不可欠な食材です。中南米産の唐辛子が長い時間をかけて改良され、辛味を持たないパプリカが誕生しました。なんとハンガリーには150種類以上のパプリカがあり、ハンガリーの人々は用途によってパプリカを使い分けているのです。
焼いてそのまま食べるのはもちろん、中に具を詰めたり、粉末にして調味料にしたりと、非常に多彩な調理方法があります。ハンガリーの料理には必ずと言っていいほどパプリカが使用されており、そのためハンガリー料理は赤いものが非常に多いのも特徴です。
ハンガリーの農民は経験からパプリカが栄養豊富であることを知っていましたが、ハンガリーのノーベル賞科学者セント=ジェルジ・アルベルトは1932年、パプリカから栄養素を精製し、それをビタミンCと名づけました。
ハンガリーは多数の国に囲まれた内陸国のため、魚介類は非常に高価となっているそうで、日常的に食べられることはありません。その影響もあり、ハンガリーでは食肉文化が非常に発展しています。日本でいうモツのような部分など、様々な部位を調理して食されています。
代表的なハンガリー料理であるパプリカーシュという食べ物は、肉をパプリカを粉末状にしたものとブイヨンで煮込み、仕上げにサワークリームを加えるというもので、この国の食文化の特徴を詰め合わせたような料理と言えるでしょう。
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