ヨーロッパの国章は国によって実に様々ですが、多くの紋章には、ライオンやワシ、牛や犬、などその国にゆかりのある動物が描かれています。ヨーロッパ54カ国中、35カ国は動物をデザイン構成の一要素にしています。
ウマは古来よりの人間との関わりから、忠実・戦争・勝利などのシンボルとして、紋章に描かれることが多いです。トルクメニスタンの国章には、トルクメニスタン人の誇りとされる、同国で最も優れた品種のものが描かれています。
ヨーロッパでは、国章に動物が描かれている35カ国のうち16カ国がライオンを採用しています。「百獣の王」と言われるように、勇気・力・権力などの象徴として利用されることが多いです。
国章にライオンが描かれた国
ジョージア、エストニア、オランダ、ラトビア、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、イギリス、ルクセンブルク、チェコ、アルメニア
ワシは、国章に動物が描かれている欧州35カ国のうち、14カ国が採用している、非常に登場頻度の高い動物です。ワシは最強の猛禽類で、古来より「空の王者」「最高神の使者」などと呼ばれてきました。紋章に用いられる場合、勇敢さ・強さ・遠眼・不死の象徴などの意味をもちます。
ヨーロッパの国章にワシの採用が多いのは、かつてのヨーロッパの覇者ローマ帝国がワシの国章を採用していたなごりです。
ウシは平和・寛容・義務などの象徴とされることが多いです。ヨーロッパではアンドラが国章のデザインに採用してるほか、イタリアの都市トリノの紋章には金の雄牛が描かれています。
タカは肉食の大型鳥類です。猛禽類としての習性から共同体の威厳を表すシンボルとされやすいです。ヨーロッパではキルギスが国章のデザインに採用しています。
国章にタカが描かれた国
キルギス
ヨーロッパでは北キプロスがオリーブの枝をくわえたハトを採用しています。ハトは旧約聖書のノアの箱舟の伝説から、オリーブとともに平和のシンボルとされています。
国章にハトが描かれた国
北キプロス
フモはペルシア神話の不死鳥フマと起源を同じくする伝説上の動物です。この鳥の影が落ちた者全てに幸運を与えると伝えられています。ヨーロッパではウズベキスタンが幸福・自由・愛の象徴として採用しています。
国章にフモが描かれた国
ウズベキスタン
ユニコーンは別名一角獣と呼ばれる馬に似た伝説上の生き物。ヨーロッパではイギリスが国章のデザインに採用。スコットランドを象徴する動物であり、スコットランド王家の象徴にもなっている。イギリスでは危険な獣とされているため鎖に繋がれている。
グリフォンは、ワシの翼と上半身、ライオンの下半身を持つ伝説上の動物。ヨーロッパではラトビアが国章のデザインに採用。ラトビアの歴史的な地方であるヴィドゼメとラトガレを象徴している。また紋章学では「知識」を象徴する動物としても用いられる。
ヨーロッパ各国の国章には、それぞれの国の歴史、文化、価値観が反映されています。動物が描かれた国章は、その国のアイデンティティや象徴を表しており、古代から現代に至るまでの伝統や神話、自然との関わりを表現しています。ライオンやワシ、ユニコーンなど、これらの動物たちは国民の心に深く根付いているとともに、国の歴史や文化の多様性を物語っています。これらの紋章は、それぞれの国の過去と現在、そして未来へのビジョンを伝える貴重な手がかりであり、各国のアイデンティティの重要な一部を形作っています。
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